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見習い魔術師

見習い魔術師

net-1  【死神の王国】


紅が、舞う。

ヒラリ、ヒラリ。

見なれた光景も、この時ばかりは歓喜する。

鉄のようなニオイ。
人が持つ、その独特の。


紅が、舞う。

ヒラリ、ヒラリ。
ユラ、ユラと。

光の中でも闇の中でも。
その輝きは、妖しさを秘めている・・・。


己の腕から溢れたソレを、静かに舌で拭う。

・・・・・・から。

違う、から。

知られてはいけない。
それは、すでに亡くした祖父の遺言。
お前は、誰にも知られてはいけない・・・。

尖った耳、額と右の腕にある、独特の文様。
明らかに人のモノとは違う、いくつもの明るさが混じった、深緑の髪。

すでに幾十、あるいは幾百の年の間、繰り返してきた事。
広い海の中、すでに消されたその小さな島を知った者を。

――――――消せ、と。

亡き祖父の。


声ともとれぬ悲鳴さえ、すでになくなった肉塊。
ソレを一蹴すると、男は自らの館へと足を向けた。自らの、王国。

・・・誰にも、知られるな・・・。

祖父の言葉は、呪いのように耳を離れぬ。

・・・奴らはお前の背中に切りかかり、眠った首を引き千切る・・・。

男は、自らしか住まぬその館の扉に、肉塊から奪い取った首飾りを掛けた。


祖父の最後の言葉を口にした。

「―――奴らに・・・」



     
            ―――奴らに、口を与えるな・・・!―――


「恐怖は、死した者の口にさえ蓋をする・・・」

呟いたのは、何処で聞いたものだったか・・・。




                 

                       知った奴らを、殺せ。



         


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